冷静になろうとしたのに、そんなの所詮ムリだった。

 我を忘れたように昴にありったけの怒りをぶつけると、はぁはぁと肩で荒い息をする。

 そんなわたしを、ポカンとした表情で先輩たちが見つめてくる。

 息が整ってくると、わたしは先輩たちに向かってにこやかな笑みを浮かべ、ぱちんと手を合わせた。

「ああ、なるほどぉ。これが目的だったんですね。エサにうまく食い付いてノコノコこんなとこまでアイツが来てくれてよかったですね。それじゃあ先輩方、お邪魔虫はとっとと消えますので。あとはアイツとよろしくやっちゃってください」

 そう言い終えると、呆気にとられている先輩をぐいっと押し退け、包囲網から脱出した。

 そのまま目を合わせないようにして昴のいる方へと大股で歩いていくと、昴の横を無言で通りすぎる。

「千夏……隣にいてやれなくてゴメン」

 昴の横を通りすぎるときに、ボソリとつぶやくのが聞こえたような気がした。