「そ、そうですけど、なにか? ただの幼馴染同士がキスって。そんなの、少女マンガじゃあるまいし、本当にあるわけないじゃないですか」

 こうなったら開き直るしかない。

「だいたい先輩方は、昴のどこを見てるんですか? 演技派俳優? 笑わせないでください。あんなの、ただの悪ガキですよ」

 想定外のわたしの反撃にたじろいだ先輩が、一歩後ずさりする。

 そのとき——。

「ひどい言われようだな」

 男子のよく通る声が校舎裏に響き、声のする方を一斉に見ると、昴が校舎の壁に手をついて苦笑いしながら立っていた。


 ……なんでいるの?


 ふつふつと怒りが体の内側から湧いてくるのを感じて、わたしはぎゅっとこぶしを握り締めた。

「あんた……なにやってるの?」

「もちろん、千夏を助けに来たつもりなんだけど?」

 昴がにこっと笑う。

「ヒーロー気取り? バっカじゃないの!? あんた、人の迷惑って考えたことある? そんなことして、わたしが喜ぶとでも思ったわけ!?」