だけど、ただのいちファンでいられたら、どれだけ楽だっただろう……なんて思わず考えてしまう。

 こんな叶わない恋なんて、したって苦しいだけだから。


 だって、昴はみんなの『藤沢昴』だから。

 わたしなんかの手の届かないところに、昴はいるんだから。


 なのに、昴に向かって無意識のうちに手を伸ばしかけていた自分に気付いて、もう片方の手でその手をぎゅっと握り込んだ。

 そんなわたしに気付いたのか、昴がほんの少しだけ首をかしげる。

 だからわたしは、ふるふると首を左右に振って見せたんだ。


 ——そして、このときの不注意が間違いだったと気付かされるまで、大して時間はかからなかった。