「な、なによ」

「ちょっとは元気出たみたいだなーと思って」

 そう言いながら、昴がわたしの顔を覗き込んでくる。

「あーもう、近いってば!」

 へらへら笑う昴をぐいっと力いっぱい押し返すのと同時に、やっと次の電車の到着を知らせるアナウンスがホームに流れた。


 話した内容なんて、本当に他愛ないことばかりだった。

 高坂先生の地理の授業が子守歌だって話とか、英語の大野先生のモノマネだとか。

 だけど、そんな時間がすごくすごく楽しくて。

 そして、自覚せざるを得なくなる。


 わたしはやっぱり昴のことが好きだ——って。


 最初は、イタズラしては楽しそうに笑う昴の笑顔が好きになって。

 そしたら、いつの間にか昴の全部が大好きになってた。