「……ちょっとヘコむことがあったから、励ましてもらってただけ。だいたい、なんでこんな時間にこんなとこに昴がいるのよ。とっくに家に着いてる時間でしょ?」

「それはこっちのセリフ。俺はちょっと用があって、駅前の本屋に寄ってたの」

「あっそ。昴でも本なんか読むんだ」

「ひどっ。千夏の中で俺ってどういう位置付けだよ」

「ただの悪ガキ」

 即答するわたしに、昴がはぁ~と深いため息を吐く。

「なあ。どうやったらそれって変えられるわけ?」

「ムリ。一生変わらない」

「……じゃあ、なんでヘコんでたんだよ?」

「言いたくない」

 思わず突き放すような言い方をしてしまい、すぐに後悔の念が押し寄せる。


 だけど……言えないよ。さっき、同じクラスの男子に告白されました、なんて。

 言えないよ。「好きな人がいるからお付き合いできません」って答えたなんて。