「私のところで侍女をしてくれている子だ」
 ツバキ団長が、彼女を紹介してくれる。
 いきなり現れた女の子に、私は「あの時の…」と声を漏らす。

 何年か前に、露店の前で泣いていた子だ。
 まさか、ツバキ団長のところの侍女だったとは。
「はっじめまして。ボクはホワイトです。こう見えても男~。可愛い子ちゃん、君は?」
 可愛い子を見るとすぐにアピるのが白雪姫の悪いところ。
 ジェイと私は白雪姫を見て、げんなりとする。
 コイツは、国中の可愛い子を恋人にしたいという野望を持つおバカちゃんなのだ。

 女の子は戸惑ったように、ツバキ団長を見る。
「彼女には、まだ名前を付けてない。ミュゼ、名前を付けてくれるか」
「え、いきなり!? え、名前って、え!?」
 女の子を見て、悲鳴を上げてしまうが。
 ああ、任務の為に新しい呼び名が必要ってことなのねと納得する。

「じゃあ…、シナモンはどうでしょう? 綺麗な茶色い髪だし綺麗な瞳だし」
 とっさに浮かんだ「シナモン」という言葉に。
 ツバキ団長と女の子は目を合わせた。
 あれ、何かまずいことを言っただろうか。

「ありがとうございます。本日よりミュゼ様の侍女として働かせていただきますシナモンです」
 ぺこりと頭を下げる女の子。
「かっわいー」と横にいた白雪姫が大声で言ったのだった。