風がそよそよとなびいて。春が来たんだなあとピンクは思った。
「ねえ、ピンク。昔話してよ」
 と、子供たちがピンクに催促する。
 ここは、スカジオン王国にある妖精の森。
 かつて、妖精族は絶滅危惧種と言われていたが、王族に護られる形となって、絶滅は免れた。一時期は、妖精の飽和状態という頃もあったが。
 今は、比較的に落ち着いている。
 ピンクは、4人の子供たちに、昔話をする。
 子供たち…と言うが、ピンクの子供ではないと、はっきりと言っておく。
 目を輝かせて、ピンクの話を聞いている子供たちを見て。
 ピンクはあの頃をとにかく、懐かしいと思っていた。
 妖精は王族に護られるお礼として、王族のもとで生涯を尽くす。
 生涯…と言っても、妖精の寿命は千年と言われ。
 千年間、王族のために莫大な時間を過ごすのか…と昔は思ったものだ。
 たいていは、この国で王族のもとで過ごすのが当たり前と考えている。
 だが、ピンクはそんなの嫌だと考え、この国を飛び出して隣国のティルレット王国で。        
 とある令嬢の侍女をした過去を持っているのだ。

 数々の体験を語ると、子供たちは「うおー」とか「すごい」と声を漏らす。
「ピンク、お客さんが来てるんだけど」
 空から声が振ってきて。ピンクは「お客?」と首を傾げる。
 現在、ピンクは王族からは離れ、子供たちの教育係として存在している。
 そんな自分にお客って誰だろう?
 教えてくれた妖精に「ありがとう」と言って。
「今日はこの話は終わりね」
 と子供たちに伝えると。
 急いで、人間の姿に化けて、温室へと走った。