その名前を聞いて、一花の目が大きく見開かれる。知り合いだったようだ。

「もしかして、小学校の時の?」

「そうよ、ようやく思い出したようね」

千春はフンと鼻を鳴らし、腕組みをしながら言う。その態度から、小学生の頃にお互い仲良く遊んでいた友達という関係ではないのだと桜士は察した。

「何のご用ですか?私の記憶が正しければ、私たちはそれほど親しい関係ではなかったはずですが……」

一花が首を傾げながら言うと、千春は「七海」と言う。七海はかばんの中から派手なバラの絵が描かれた封筒を取り出し、一花に渡す。

「千春様のお父様が会社を経営されていることは覚えてらっしゃるかしら?千春様のお父様は、新しいホールを建設されたの。そこで小学校の同窓会を兼ねたパーティーを開くことになったのよ」

「あなたは途中でいなくなってしまったけど、千春様がせっかくだからと招待状を作ってくださったの。感謝なさい」

莉緒と玲が一花を見下したように言う。桜士が一花とこの四人の関係を頭の中で分析していると、千春がゆっくりと近付いて来た。少し彼女に近付かれただけで、彼女のつけている甘ったるい香水の匂いが鼻に付く。