零菜は父親と同じく、上司や同僚、部下や街の人々からの人気が絶えない。

罪を犯した人も皆、零菜だと全ての罪を告白するのだ。

「零菜ちゃん、おはよう」

「澄田さん、おはよう。どこかお出かけ?」

「うん。新しい杖を買ったから、近くの河川敷まで」

「そっか!車、気をつけてね?」

澄田小百合(すみだ さゆり)七十五歳は、良夜の死のきっかけとなった十五年前の事件以来、当時十歳だった零菜を高校卒業までずっと育ててくれた恩人だ。

零菜は杖を突くようになった小百合を見て、少し悲しそうな顔をした。

母親を早くに失った零菜は、母親との記憶がほとんどない。だから、長いこと育ててくれた小百合を本当の母親のように思い、慕っていた。
幼い頃から元気な姿を目の当たりしていたから、尚更なのだろう。

零菜はゆっくり歩いていく小百合を追いかけ、「何かあったら絶対連絡してね」と伝え、その足を警視庁の方に向けてゆっくりと歩き出した。

警視庁に入り、