ハートがバキバキ鳴ってるの!

「いいよ。みかるんにはいつも無理させてるから、今日はご褒美に言うこと聞いてあげる」
「賛成。オレもみかるちゃんの決めたことになら、文句言わずついてくぜ」

 そんなこと、急に言われても……。

 先輩たちの本気のぶつかり合いを目の当たりにして、すっかり小さくなっていたあたし。
 いきなり意見を求められたって、なにを言えばいいかわからないよ。

「あ、あたしは……」
 必死に舌を動かしながら、先輩たち一人ひとりの顔に目を配る。

 お客さんの期待に応えようとするセラ先輩。
 自分たちの理想の演奏を追い求めるモニ先輩。
 全体が崩れてしまわないように気を配るテツ先輩。

 やっとバンドに慣れてきたばかりのあたしは、まだ自分の演奏で精一杯で。
 先輩たちみたいに、しっかりとした「こうあるべき」を掲げるのは難しい。
 
「あたしには……まだよくわかりません」
 静けさに耐えられなくなって、頭の中のぐちゃぐちゃをそのまま引っ張り出す。
「演奏のクオリティーがどうとか、お客さんに対しての誠実さとか、まだそこまで考えきれません。ですが——」

 絡まった気持ちの先っぽに。
 絶対に譲りたくないと思えることが一つだけ見つかった。

「あたしは、浅野くんがいなきゃイヤです」

 こんな個人的な気持ちで部の大事な方針を決めていいのか、後ろめたさはあったけど。
 口に出してみて、心に空いた穴の大きさを自覚した。

「ずっと隣で頑張ってきた浅野くんと一緒に演奏できないなんて、あたしは無理です」
 防音バッチリの部室に響く、身勝手な想い。

 あたしのわがままに共振して、キーボード奥にいる部長の口が開かれた。
「決まりね。私の勝ち」
 そう言っていたずらっぽく笑うモニ先輩。

「しゃーねーな!」
 続いてセラ先輩が、パイプ椅子から勢い良く立ち上がった。
「そう決まったからには、順番代わってもらうのはオレに任せろ! ダンス部の女の子たちは、オレの頼み事ならだいたい聞いてくれるから!」

「セラの女好きがこんなところで役立つとはねー」
「ふふん、オレの顔の良さと広さに感謝しな」
 ふざけ合う二人の横顔を、テツ先輩の微笑みがぽかぽかと照らしていた。