ああ、言い損ねちゃった。どうしよう。
 だけど——
 テキパキと楽器の準備を進める四人を見ながら、体の中でなにかがふつふつとわき起こる。
 生のバンド演奏を聴くのって、初めてかも。
 入部するかはさておき、音楽を聴けるのは楽しみだと思っているあたしがいた。

「あの、ちなみに、なんて曲を演奏してくださるんですか?」

 誰に質問していいかわからず、四人の顔を少しずつ見ながら尋ねる。
 もし、知ってる曲だったらうれしいな。

「みかるんは絶対知らない曲だよ。三月に作ったばかりで、まだ人前でやったことないからね」

 キーボードの設定を進めながら、モニ先輩が答えてくれた。

「あ、そうなんですね……って、え!? 自分たちで作ったんですか?」

 中学生で、作曲ってできるの!?

「へっへーん、そうだよ!」

 得意げにニヤリとするモニ先輩。

「作曲は私で、作詞はセラ! 今年は基本このスタイルでやっていく予定!」

 すごいなー、と思いつつ、正直なところ少し心配にもなった。
 いくら三年生とはいえ、中学生が作った曲って、ほんとにちゃんと仕上がってるのかな。

「楽しみにしててね」

 セラ先輩が、自信たっぷりな笑みを見せながら私にパイプ椅子を用意してくれた。一言お礼を告げてから腰を下ろす。

「ベースがないので音が薄いと思いますが、楽しんでくれるとうれしいです」
「は、はい、ありがとうございます」

 テツ先輩の言った意味はあまり理解できないまま、頭を下げた。

「みんな用意はいい?」

 モニ先輩が部室を見渡すと、三人が同時にうなずいた。

「じゃ、いくよ! 『君の瞳はマグネット』」

 モニ先輩の右手が、ゆっくりと鍵盤に触れる。

 ——部室が、まぶしい音色に包まれた。