ハートがバキバキ鳴ってるの!

 いつもひたむきに練習していた浅野くん。
 いくらなんでも、ずっと目指していた文化祭ライブに出ないまま終わるなんて。
「あんなに好きだった音楽をこんな形で辞めて、納得できるわけないよ! 浅野くんだって、ほんとうは出たいんでしょ!」
「何様のつもりだ!」
 ギロッとにらまれて、喉が一時停止ボタンを押されたように固まる。

「わかったような口を利くな! おれのやるべきことを知っているのは、おれだけだ!」
「だって……」
 どうにか言い返そうとしたけど、続きの言葉が出てこなかった。

 小さくなったあたしを見て、浅野くんが少し声を落とす。
「文化祭を急に抜けたのはほんとに申し訳ない。けどさ、おれの将来のことは、あんたには関係ないだろ」
「うん、そうだね。ごめん」

 ——だって、あたしは浅野くんがいなきゃイヤだから。
 声にできなかった気持ちを飲み込むと、恥ずかしさで胸が焼かれた。

 あたし、わがままだな……。
 浅野くんのためを思って説得するような口ぶりをしたけど。
 ほんとうは、そうじゃなかった気がする。

 浅野くんを引き止めたいというこの気持ちは、彼への思いやりなんかじゃなくて。
 浅野くんと部活がしたい、浅野くんとの接点を取り戻したいという、身勝手な気持ち。
 自分のわがままのために、浅野くんの大事な将来をかき乱そうとしてしまった。 

「浅野くんのことは、浅野くんにしかわからないもんね」
 あたしたち一組の教室が、目と鼻の先だ。
「勉強、頑張って」

 入り口をくぐり、給食台に温食缶を下ろす。
 取っ手から浅野くんの手が離れた途端、あつあつのスープが急に冷めたような気がした。