ハートがバキバキ鳴ってるの!

 ※ ※ ※

「やめなよ」

 十一月のある日、お昼の休み時間。
 いつも通り橋乃口くんたち三人にからかわれていた時、教室に凛とした声が響いた。
 叫んでいるわけでも、怒鳴っているわけでもない、静かな迫力のある声。

「瀬底さん、嫌がってるじゃない」
 一番前の席、学級委員長の光橋舞さんが、頬杖をついて橋乃口くんたちをにらんでいた。

「あん? 光橋に関係なくね?」
 近くの机にもたれながら、橋乃口くんが言い返す。

「関係ないって言うならさ、瀬底さんの手の形だってあんたたちにはこれっぽっちも関係ないでしょ」
「別に冗談で言ってるだけだし」
「瀬底さん、ちっとも笑ってないけど」
 あたしは表情を動かさないまま、黙って二人のやりとりを聞いていた。

「これ以上やるんならさ——」
 立ち上がった光橋さんが、生徒指導をする先生のような口調で言う。
「前にあんたがノゾミちゃんにラブレター書いたこと、クラスのみんなにバラすから」
「な、なんのことだよ」
 知らないふうの橋乃口くん。
 けれど、その声色にははっきりと焦りが現れていた。
「ふーん、とぼけるんだ?」
 腕を組んで、考え事するような目で橋乃口くんを見据える光橋さん。

「知らねーってば。めんどくせーな。おい、グラウンドにサッカーしに行こうぜ」
 橋乃口くんは最後にあたしを見て舌を出したあと、友達を引き連れて廊下へ出ていった。