「えっと、これは、生まれつきで」
橋乃口くんが口にした「なんで」は、理由を聞くための「なんで」ではない。
なんとなくそんな予感を覚えながら答えると、案の定話がおかしな方向に進み始めた。
「そんな手の形してるから、餃子も上手く包めないんじゃね?」
「そうなのかな……」
違うよ。
あたしが不器用なのは、手の形とは関係ない、たぶん。
そう思ったけど、やっぱりちゃんと言葉にできなくて、黙ってうつむくだけだった。
「よく見ると、変なの。人差し指長すぎだろ。中指が二本あるみたい。な?」
橋乃口くんが隣を見ると、田村くんは「たしかに」と言ってかすかに笑い声を漏らした。
ズキン、と胸のあたりに痛みが走る。
「よお、ハッシー! 餃子できた? ……って、なんじゃこりゃ!?」
通りがかった男子二人が、橋乃口くんの持つフライパンを見て目を丸くした。
「こいつが全部台無しにしやがった」
橋乃口くんがあごであたしを差し、男子二人が「やばっ」と言って笑う。
「人間の食べ物じゃねーよこんなの」
「閲覧注意画像だわ!」
二人が早く自分のテーブルに戻ることを願いながらじっと立っていると、橋乃口くんがあたしに一瞥をくれてから言った。
「おれ決めた。今日からこいつのこと、『ユビナガオンナ』って呼ぶことにするわ」
「ユビナガオンナ?」
男子二人が首をかしげる。
「そう、人差し指が長いからユビナガオンナ」
「あー、たしかに瀬底ってちょっと変な手の形してるよな」
「人差し指だけ先に成長期来たんじゃね?」
「ぎゃはは」
「スープできたっぽいけど、味見してみる?」という田村くんの遠慮がちな声を合図に、ようやく三人の会話が中断された。
「そういうわけで、よろしくな、ユビナガオンナ」
橋乃口くんがそう言うと、後ろの男子二人がクスクス笑いながら自分の班のところへ戻っていった。
餃子が台無しになったことを、笑い話にしようとしてくれたのかな。
そう考えることで、気を紛らわそうとした。
胸の中にこびりついた黒焦げを、見ないふりした。
橋乃口くんが口にした「なんで」は、理由を聞くための「なんで」ではない。
なんとなくそんな予感を覚えながら答えると、案の定話がおかしな方向に進み始めた。
「そんな手の形してるから、餃子も上手く包めないんじゃね?」
「そうなのかな……」
違うよ。
あたしが不器用なのは、手の形とは関係ない、たぶん。
そう思ったけど、やっぱりちゃんと言葉にできなくて、黙ってうつむくだけだった。
「よく見ると、変なの。人差し指長すぎだろ。中指が二本あるみたい。な?」
橋乃口くんが隣を見ると、田村くんは「たしかに」と言ってかすかに笑い声を漏らした。
ズキン、と胸のあたりに痛みが走る。
「よお、ハッシー! 餃子できた? ……って、なんじゃこりゃ!?」
通りがかった男子二人が、橋乃口くんの持つフライパンを見て目を丸くした。
「こいつが全部台無しにしやがった」
橋乃口くんがあごであたしを差し、男子二人が「やばっ」と言って笑う。
「人間の食べ物じゃねーよこんなの」
「閲覧注意画像だわ!」
二人が早く自分のテーブルに戻ることを願いながらじっと立っていると、橋乃口くんがあたしに一瞥をくれてから言った。
「おれ決めた。今日からこいつのこと、『ユビナガオンナ』って呼ぶことにするわ」
「ユビナガオンナ?」
男子二人が首をかしげる。
「そう、人差し指が長いからユビナガオンナ」
「あー、たしかに瀬底ってちょっと変な手の形してるよな」
「人差し指だけ先に成長期来たんじゃね?」
「ぎゃはは」
「スープできたっぽいけど、味見してみる?」という田村くんの遠慮がちな声を合図に、ようやく三人の会話が中断された。
「そういうわけで、よろしくな、ユビナガオンナ」
橋乃口くんがそう言うと、後ろの男子二人がクスクス笑いながら自分の班のところへ戻っていった。
餃子が台無しになったことを、笑い話にしようとしてくれたのかな。
そう考えることで、気を紛らわそうとした。
胸の中にこびりついた黒焦げを、見ないふりした。
