ハートがバキバキ鳴ってるの!

 ※ ※ ※

「なんっだこれ!」
 フライパンを覗き込むなり、クラスメートの橋乃口くんが大きく顔を歪ませた。

「ごめんなさい……」
 ぐちゃぐちゃになった餃子(もどき)に目を落としながら、重たい唇を動かす。
「あたし、餃子包むの初めてで、その……」

 四年生になって始まった月二回のクラブ活動。
 おいしいものが食べたいという理由で、ほぼ未経験の料理クラブに入った。

 九月二回目となる今日の活動は、前からやってみたかった餃子作りだ。
 すっかり張り切っていたあたしは、スープとお米を橋乃口くんたちにお願いして、餃子包みをほぼ一人で担当した。

 ところが、やってみると思っていたよりもずっと難しくて。
 早くグループの人や先生にSOSを出せばよかったんだろうけど、自分の力でやってみたかったあたしは、誰にも相談せずに一人でせっせと具を包んだ。

 その結果、フライパンの中で大半の餃子が崩れちゃったというわけだ。

「最悪じゃん、餃子楽しみにしてたのに! なあ?」 
 橋乃口くんに同意を求められた田村(たむら)くんが、「うんうん」とうなずく。

「お前さ、不器用なら不器用なりに自分の役割考えろよ」
 あたしなりに頑張って包んだんだし、そこまで言われる必要ないじゃん。
 ……と思ったけど、口には出さなかった。
 明るくスポーツ万能で「クラスの中心メンバー」って感じの橋乃口くん。
 そんな権力者に言い返せるような度胸はなかったし、なによりも申し訳ない気持ちでいっぱいで、口答えするどころではなかった。

「ほんとにごめんね。なるべく形整えて盛り付けるから」
「もういいよ、瀬底は触んな」
 フライ返しを取り上げられて、手持ち無沙汰に立ち尽くす。

「てか前から思ってたんだけど」
 ガシガシと餃子もどきをフライパンから削り取りながら、橋乃口くんがちらっとあたしの右手を見た。
「お前さ、なんで人差し指と中指の長さおんなじなの?」