「なに、それ……」
突然床が抜けたような感覚。
聞き違いであってほしかった。
イヤホンのしすぎで耳が悪くなったのだと、そう思いたかった。
けれども、大好きな親友の声は、痛いほど鮮やかに頭の中で響いていた。
「前も言ったけど、いつか私たちはそれぞれ独立して生きていかなくちゃいけないのよ」
視線に耐えられなくて下を向くと、舞ちゃんの読んでいた本の表紙が目に入った。あたしには読めない漢字のタイトル。
「みかるもね、ある程度のことは自分でできるようにならないと」
二年以上の間、常にあたしの味方でいてくれた舞ちゃん。
「テストも真面目に受けない、課題も出さない、知らない大人とも話せない」
聞き慣れた声が、容赦なくあたしの心をえぐっていく。
「そのままだと、社会で生きていけないよ」
ぐうの音も出ない正論。
だからこそ、体中の血液がふつふつと煮えたぎって——
「なによ!」
バン、と物騒な音がした。
手のひらに痛みを感じて、自分が机を叩いたのだと気づいた。
教室でおしゃべりしていた人たちが、驚いてあたしたちのほうを見ている。
「なになに、喧嘩?」と囃し立てる男子数人。「ほっとけ」とたしなめたのは、聞き違いじゃなければ浅野くん。
「舞ちゃん、どうせあたしといるのが面倒になっただけでしょ!」
「そうじゃないよ。みかる、落ち着いて」
「落ち着かないもん!」
困った時に助けてくれないなんて。
そんなのもう、友達じゃない。
「自分だけ先に彼氏作って! 最近タクマくんとの約束ばっかだし! あたしのこと邪魔なんだよね!」
「みかる、違うってば」
「うるさい、うるさい!」
落書き一つない机に、汚れた涙が滴り落ちた。
「もう舞ちゃんなんか、嫌い!」
どこへ行くともなく、教室を飛び出す。
ぼやけた視界には、廊下がはっきり映らなくて。
その代わり目の前に現れたのは、ランドセルを背負っていた頃の記憶だった。
突然床が抜けたような感覚。
聞き違いであってほしかった。
イヤホンのしすぎで耳が悪くなったのだと、そう思いたかった。
けれども、大好きな親友の声は、痛いほど鮮やかに頭の中で響いていた。
「前も言ったけど、いつか私たちはそれぞれ独立して生きていかなくちゃいけないのよ」
視線に耐えられなくて下を向くと、舞ちゃんの読んでいた本の表紙が目に入った。あたしには読めない漢字のタイトル。
「みかるもね、ある程度のことは自分でできるようにならないと」
二年以上の間、常にあたしの味方でいてくれた舞ちゃん。
「テストも真面目に受けない、課題も出さない、知らない大人とも話せない」
聞き慣れた声が、容赦なくあたしの心をえぐっていく。
「そのままだと、社会で生きていけないよ」
ぐうの音も出ない正論。
だからこそ、体中の血液がふつふつと煮えたぎって——
「なによ!」
バン、と物騒な音がした。
手のひらに痛みを感じて、自分が机を叩いたのだと気づいた。
教室でおしゃべりしていた人たちが、驚いてあたしたちのほうを見ている。
「なになに、喧嘩?」と囃し立てる男子数人。「ほっとけ」とたしなめたのは、聞き違いじゃなければ浅野くん。
「舞ちゃん、どうせあたしといるのが面倒になっただけでしょ!」
「そうじゃないよ。みかる、落ち着いて」
「落ち着かないもん!」
困った時に助けてくれないなんて。
そんなのもう、友達じゃない。
「自分だけ先に彼氏作って! 最近タクマくんとの約束ばっかだし! あたしのこと邪魔なんだよね!」
「みかる、違うってば」
「うるさい、うるさい!」
落書き一つない机に、汚れた涙が滴り落ちた。
「もう舞ちゃんなんか、嫌い!」
どこへ行くともなく、教室を飛び出す。
ぼやけた視界には、廊下がはっきり映らなくて。
その代わり目の前に現れたのは、ランドセルを背負っていた頃の記憶だった。
