「瀬底さん、お話があります。お昼の休み時間、職員室に来なさい」

 翌日、国語の授業の終わり間際。
 返却された十八点の答案用紙をクリアファイルにしまっていると、柳先生に呼びかけられた。

 なんだかイヤな予感がする……。

 ※ ※ ※

「先生、お話ってなんでしょうか」
 休み時間が始まってすぐ、言われた通り先生のデスクの前まで向かった。

 ふーっとゆっくり息を吐いて、ノートパソコンを閉じる柳先生。
 少し顔を曇らせたあと、やがて毅然とした表情を浮かべて口を開いた。
「率直に言います。瀬底さん、あなたの国語の成績は悪すぎます」

 うう……。
 重々自覚していることだけれども、そうはっきり言われると耳がツンと痛む。

「テストの点数が伸びないだけなら、先生は怒りません。誰にでも苦手なことはありますからね。ですが——」
 あたしに突きつけられた瞳の奥から、「ほんとは俺だってこんなこと言いたくないんだ」という悲痛な叫びが覗いている。
「提出物も全然出していないでしょう。このままでは、『1』をつけるしかありません」

「い、『1』ですか!」
 思わず聞き返しちゃったけれど、中間・期末テストの合計点数や今までの宿題の提出状況を考えれば、わかりきったことだった。

「他の教科はそれなりの成績をキープしているのに、もったいないですよ。『1』がつくと、この先の高校入試でかなり不利になってしまいます。特別課題を出しますから、修了式の日までに提出しなさい」

 どさり。
 あたしの両手に、山のようなプリントが落とされる。

「えー! ちょ、これ全部ですか!?」
「はい、全部です」
「あの、答えはついてますか?」
「ついていません」
 そんなー!
「間違ってもいいので、まずは自分でやってみなさい。いずれ入試ではなにも見ずに問題を解かないといけないんですから。答えを写してばかりいると、あとで困るのは瀬底さん自身ですよ」

 それでは頑張ってくださいね、と言って柳先生はパソコンの画面をつけ、仕事に戻った。

 先生なりにあたしのためを思って出してくれた課題だってことはわかるけど。
 にしても、ただでさえ国語嫌いなのに、こんな大量の問題解けないよー!
 しかも模範解答ないなんて、詰みじゃん。
 
 ……ま、とはいっても、実はそんなに絶望する必要はないんだけどね。
 だってあたしには、心強い親友がいるから!