ハートがバキバキ鳴ってるの!

「どうしたの、急に?」
「ほら、さっきの映画見てさ、恋愛感情ってどんなものなんだろうって気になって」

 舞ちゃんは、あたしの知らないことをいつでも教えてくれる。
 だから、今回だって舞ちゃんに聞けば胸の中をスッキリ整理できると思った。
「タクマくんのことを想うと、どんな気持ちになるの?」
 
 少し黙ったあとに舞ちゃんが口にした言葉は、どこかそっけなかった。
「自分で味わうしかないよ」
「そんなことはわかってるよ。だけど、舞ちゃんなりにどんな感じなのかを教えてほしいの」

 わからないことは、全部舞ちゃんに聞けばいい。
 あたしの手に届かないものは、全部舞ちゃんに取ってもらえばいいんだ。
 そう思って、あたしはいつも通り舞ちゃんを頼った。

 けれども舞ちゃんは、あたしの期待したような答えを返してこなかった。
「店員さんに自分で話しかけられるようになったら、教えてあげる」
 どこか突き放したようにそう答えてから、残り半分ほどあった烏龍茶を一気に飲み干す舞ちゃん。

「どういうこと? 今それ関係ないじゃん」
 ちょっとチクっとする口調に反発して、問い詰めるような言い方になってしまう。
「関係あるかどうかは、関係ないのよ」
 舞ちゃんはそうやってひらりとあたしの質問をかわしたかと思うと、急にトレーを片付け始めた。

「あれ、舞ちゃんもう帰っちゃうの?」
「うん。私、英検の勉強しないといけないから」
「そんな、もうちょっとおしゃべりしようよ! それかあたしも一緒に帰るからちょっと待って!」
「みかるはこれからお母さんと待ち合わせしてるんじゃなかったの?」
「あ、そうだった」
「じゃあまた明日、学校でね」
 舞ちゃんは素早く荷物をまとめて立ち上がると、フードコートを抜けて人混みに紛れていった。

 小さくなっていくセミロングヘアを目で追いながら、ぼーっと物思いに(ふけ)る。
 ——あまり考えないようにしていたけど。
 舞ちゃん、最近どこかあたしに冷たい気がする。
 タクマくんと付き合い始めて、あたしばっかりに構っていられなくなったのは間違いない。

 だけど、それだけじゃなくて——
『いつか私たちも、それぞれ独立して生きていかなくちゃいけないんだから』
 中間テストの順位が返ってきた日の、舞ちゃんのあの言葉。
 単に一緒にいる時間が減った以上の、もっと重たいなにかを感じるんだ。

 それ以上考えるのが怖くなったあたしは、気を紛らわそうとストローに口をつけた。
 氷で薄まった炭酸の、少し弱々しい舌触り。
 カップの中のコーラは、いつまでも買った時の甘い味ではいてくれなかった。