ハートがバキバキ鳴ってるの!

「ふわああ、楽しみ!」

 期末テストが明けた日曜日。
 舞ちゃんと「恋やけ」の映画を見るという約束をようやく果たすことができた。

「うんうん、私は二回目だけど、なんだかんだ見たの結構前だし、楽しみだなー」
 テストが終わった解放感からか、クールな舞ちゃんもいつもより少しテンションが高い。

「マンガをどこまで再現してくれてるのか、気になる! それとさ——」
 あたしが話を振ろうとした時、バイブレーションが鳴ったらしく、舞ちゃんがポケットからスマホを取り出した。

「みかる、ほんっとごめん、タクマくんから電話来た。ちょっとだけ出てきていい?」

 まーたタクマくんか!
 もう、あたしの舞ちゃんを横取りして!
「ごめんね、なるべく早く戻るから。チケット買っといてくれる?」
 
 もしもし、と電話に出ながら少し遠くへ移動する舞ちゃんを見送り、あたしはカウンターに目を向けた。
 日曜の午後にしては今日は空いていて、割とすぐに受付してくれそうなカウンターが一つ。
 テキパキとお会計を進める店員さんの姿を観察してみる。
 ネイルと化粧がきれいな、四十代くらいの女の人。
 うっ……。

 あたし、なぜだかわからないけど、昔からあれくらいの年代の上品な女の人が苦手なんだ。
 あの店員さんの前だと緊張してうまく話せなそうだし、少し並んでるけど他のカウンターに並ぼうかな。

 だけど、問題はあの店員さんだけじゃない。
 今まで、映画館で映画見るときはいつも舞ちゃんが全部手続きしてくれてた。
 だから、あたしそもそも買い方があんまりわからないんだよね。
 もたついて後ろのお客さんに迷惑かけたりしてもイヤだし。
 うー、どうしよう……。

 しばらく身動きができずにいると、舞ちゃんが戻ってきた。

「ごめん、お待たせ。もう今日はしばらく電話出られないこと伝えてあるから。チケット買ってくれた?」
 あたしの左右の手を交互に見ながら尋ねてくる舞ちゃん。
「ううん、まだ……」
「あれ、どうしたの?」
「だって店員さん怖そうで、話せる自信ないんだもん。それに、あたしチケットの買い方よくわからないし。舞ちゃん買ってきて!」

「もう、仕方ないなー」
 呆れ顔をしながらも舞ちゃんは、颯爽(さっそう)とカウンターへ向かっていく。

 ふう、安心。
 こういうとき、舞ちゃんと友達でよかったって思う。
 あたしの苦手なことはぜーんぶ代わりにやってくれるから。