「そうですね……」
水分が体に行き渡るうち、頭の中がクリアになる。
「合格できてうれしいですけど、ちょっとみなさんに申し訳ないと言う気持ちもあります」
「申し訳ない?」
「最初のオーディションまで、自分なりに頑張って練習してるつもりではあったんですけど、やっぱり足りなかったんだなって」
二週間前までの自分の練習態度が、今となっては信じられない。
どうしてあんないい加減な姿勢で、練習した気になっていたんだろう。
「あのままじゃダメだってことにもっと早く気づいていれば、みなさんに迷惑かけなくて済んだのにって思います」
目線を下げると、モニ先輩の十本の指が視界に入った。
常に一音一音妥協せず、変幻自在の音色を奏でる指先。
「あたし、モニ先輩のバンドにふさわしいベーシストになれているんでしょうか。まだ少し自信がありません……」
モニ先輩は珍しく、なにも言わずにあたしの話を聞いていた。
カタカタカタカタ……。
少し遠くで先生がパソコンのキーボードを叩く音が、会話の間奏を埋める。
数秒の沈黙のあと、モニ先輩が唐突に切り出した。
「みかるん、私の昔話、聞いてくれる?」
「へっ? あ、はい」
斜め下を見て、少し恥ずかしそうにはにかむモニ先輩。
やがてあたしに目を合わせたかと思うと、信じられない一言を口にした。
「私の初恋の相手、弓野なんだよね」
水分が体に行き渡るうち、頭の中がクリアになる。
「合格できてうれしいですけど、ちょっとみなさんに申し訳ないと言う気持ちもあります」
「申し訳ない?」
「最初のオーディションまで、自分なりに頑張って練習してるつもりではあったんですけど、やっぱり足りなかったんだなって」
二週間前までの自分の練習態度が、今となっては信じられない。
どうしてあんないい加減な姿勢で、練習した気になっていたんだろう。
「あのままじゃダメだってことにもっと早く気づいていれば、みなさんに迷惑かけなくて済んだのにって思います」
目線を下げると、モニ先輩の十本の指が視界に入った。
常に一音一音妥協せず、変幻自在の音色を奏でる指先。
「あたし、モニ先輩のバンドにふさわしいベーシストになれているんでしょうか。まだ少し自信がありません……」
モニ先輩は珍しく、なにも言わずにあたしの話を聞いていた。
カタカタカタカタ……。
少し遠くで先生がパソコンのキーボードを叩く音が、会話の間奏を埋める。
数秒の沈黙のあと、モニ先輩が唐突に切り出した。
「みかるん、私の昔話、聞いてくれる?」
「へっ? あ、はい」
斜め下を見て、少し恥ずかしそうにはにかむモニ先輩。
やがてあたしに目を合わせたかと思うと、信じられない一言を口にした。
「私の初恋の相手、弓野なんだよね」