「……あれ?」
 まぶたを開けると、白い天井が目の前にあった。
 なぜかあたしは、柔らかいベッドの上で掛け布団に包まれていた。
 見覚えのある部屋。ここは、保健室……?
 いつのまにあたし、こんなところに。

 今の状況を思い出そうとぐるぐる考えていると、右斜め前から声が降ってきた。
「お、気がついた?」
「も、モニ先輩!」
 よかったー、という声に合わせて、大きな目がアーチを描く。茶色がかったロングヘアがふわりと揺れた。

「あの、ここって保健室ですか? あたし、どうして……」
「舞台の上で派手に倒れたんだよ。大丈夫? どこもぶつけてない?」

 そうだった。
 あたし、文化祭の再オーディション受けて、合格もらった途端に気を失ったんだった。
 だけど——
「はい、大丈夫そうです」
 どこかぶつけたような痛みはない、不思議なことに。

「よかったよかったー! いやーもう心配したんだから」
「あの、片付けとかは……?」
「みんなで済ませたから、大丈夫だよ!」
「すみません、ありがとうございます」

 お礼を言いながら、体を起こしてみた。
 脱水症状かなにかで倒れちゃっただけかな。
 今は疲れが残っているだけで、体に異常はない。

「先生! この水って飲んでも大丈夫ですか?」
 ベッドの近くのウォーターサーバーを見ながらモニ先輩が問いかけると、パーテーションの向こう側にいるらしい保健室の先生が答えた。
「どうぞー」
「いただきまーす!」

 持ってきてくれたコップを受け取って、喉を(うるお)す。
 全身が生き返るような感覚。
 水って、こんなにおいしかったっけ。

「とりあえず、オーディションお疲れさま! 頑張ったね!」
 モニ先輩がどこからか小さな丸椅子を持ってきて、あたしのそばに腰掛けた。
「この二週間いろんなことがあったけど、みかるんなりにどうだった?」