ハートがバキバキ鳴ってるの!

「とりあえずギターソロのとこだけ見てみな」
 そう言って浅野くんが、動画の真ん中あたりまでスキップする。

 ボーカルの人が鋭いシャウトを伸ばしたあと、カメラがシュミットさんを写した。
 写真で見たのと同じ金色のギターが、シュミットさんの左右の手の動きに合わせて七色の表情を見せる。
 耳が追いつかないほどの細かい旋律。
 目をつむって聞き入りたくなる高音。
 心臓にずっしりと響く重低音。
 次々と移り変わる音色が、瞬間ごとに違った種類のドキドキをくれる。
 ぽかーんと口を開けながら、映像を眺めていた。

 すると突然、どこへともなくピックをしまったシュミットさんが、ギターの指板を両手の指で叩き始めた。
 赤いネイルが、ダークブラウンの指板の上で細やかに動く。
「なに、あの弾き方!」
「タッピング」
 浅野くんが短く答えた。
 いつものギターのジャーンとかジャキジャキって音じゃなくて、なんだか少し丸い音。
 あんな奏法もあったんだ。
 ギターって、奥深いんだな……。

「すごいなー」
「だろ、すごいよな」
 普段のぶっきらぼうな調子とは全然違った声を聞いて、思わず浅野くんの顔を見る。
 
「おれ、タッピングがどうしても苦手でさ。どんだけ練習しても、なかなかあんなふうな音出ないんだよ」
 そう言った浅野くんの表情は、いつになく自信なさげで。
 その弱々しい声色は、あたしとってすごく新鮮だった。
「そっか、浅野くんにも苦手な弾き方ってあるんだね」
「当たり前だろ。おれをなんだと思ってるんだ」
 
 浅野くんがいつも一生懸命練習をしているのは知っていた。 
 だけど、涼しい顔で複雑なフレーズを弾く姿を見ながら、無意識に思っていたのかもしれない。この子は生まれた時からギターの天才なんだって。
 でも、そうじゃない。
 浅野くんだって、できないことに悩みながら一歩一歩進んでいるんだ。