ハートがバキバキ鳴ってるの!

 一瞬、聞き間違えたのかと思った。
 けれども、その次に続いた説明から、そうではないことがわかった。

「思うように弾けなくて、ほぼ毎日辛いし、悔しいし、イライラしてるよ」
「そうなんだ……。じゃ、どうしていつもめげずに練習できるの?」
「そんなの聞いてどうするんだよ?」
「どうするわけでもないけど、ただ聞きたくて」

 浅野くんはため息をつくと、スマホを取り出した。
「おれにはヒーローがいるからな」
「ヒーロー?」

 浅野くんが見せてくれた画面の中には、白人の女性が金色のギターを構えて立っていた。
 赤紫に染まった長いストレートヘア。ブルーの瞳。年齢は、たぶん三十代半ばくらいかな。

「この人、誰?」
「スカイラー・シュミット。おれが目標としているギタリストだ」
「女の人なんだ!」
「誰かに憧れるのに女とか男とか関係ないだろ」
 言われてみれば、それもそうかも。

「見てみるか? ライブ映像」
 うんうん、とあたしが勢いよくうなずくと、浅野くんが動画サイトを開いて登録チャンネルから動画を再生した。