ハートがバキバキ鳴ってるの!

 ※ ※ ※

「そこは人差し指だけで弾いたほうがスムーズになるはず」

「ゆっくりでいいから、どの指でどの弦を押さえるか考えながら弾いてみな」

 部室に到着すると、涙が乾かないうちに浅野くんのスパルタ指導が再開した。
 当分、曲を聴きながらの練習は禁止。メトロノームだけを頼りに、どの音がどの拍で入っているのかを意識しながら演奏することになった。
 今まで曖昧に弾いていた部分も、一音一音正確に弾けるように浅野くんと一緒に楽譜を見直した。

 ※ ※ ※

 練習が始まって三十分くらい経った頃。
 スタミナ切れで、指が全然動かなくなってきた。
「おい」
「は、はいっ!」
 叱られるのかと思って、ビクッと背筋を正す。
「なに改まってんだよ」
「つ、つい。それより、どうしたの?」
「疲れたなら、少し休憩するか?」
「え、いいの?」
「今の状態で練習しても効率悪いだろ」

 そうして、あたしは五分間休憩することになった。
 腕の筋肉痛を感じながら、ぼーっと座り込む。
 昨日の放課後から、いろんなことがあったな。
 初めて人前で演奏して。
 自分ではできたつもりだったのに、出演は認めないって言われて。
 ダメ出しされたあたしを、浅野くんや先輩たちがかばってくれて。
 録音してみたら、びっくりするほど下手くそで。
 思わず逃げ出しちゃったけど、浅野くんが連れ戻してくれた。

 その浅野くんは今、あたしの隣でギターを練習している。
 一心不乱に何度もピックを振り下ろす横顔。
 いつもなら、そんな浅野くんを見ても「熱心だなー」くらいしか思わなかった。
 けれども、こんなことがあった今日は、ついそのひたむきな姿に関心を持ってしまう。

「ねえ、浅野くん」
「なんだよ」
 練習の邪魔だと言いたげな、そっけない返答。
 だけど、あたしはどうしても今聞いてみたかった。
「浅野くんは、練習が辛くなっちゃうことってある?」
「はあ? なに急に?」
 細い弦で高音を奏でながら、浅野くんが片手間で答える。
「毎日一生懸命練習してる浅野くんでも、ギターがイヤになっちゃう日はあるのかなーって気になって」
「ほぼ毎日」
「へっ?」