ハートがバキバキ鳴ってるの!

 涙をこらえながら、早足で廊下を歩いた。
 あーあ、勢いで飛び出してきちゃった。
 浅野くんには申し訳ないけど、もうあれ以上部室に居続けることができそうになかった。

 先輩たちが修学旅行から帰ってきたら、ちゃんと挨拶しよう。
 今までお世話になりました、みなさんに釣り合うベーシストを見つけて頑張ってくださいって。
 今から新しいベーシストが見つかるのかわからないけど、最悪ベース抜きでも、あたしがいるよりはまともな演奏になるかもしれないし。

 ぐるぐるぐるぐる、そんなことを考えながら歩いていた。
 下を向いていたから、気づかなかった。
「いてっ」
 頭のてっぺんのほうに柔らかい衝撃を受けて、声が出た。
 前から歩いてきた人とぶつかったみたい。
「すみませ……」
 顔を上げて、衝突した相手の姿を確かめる。
 その瞬間、体が動かなくなった。
 見覚えのある、そして二度と見たくなかった顔がそこにあったから。
 
「あれ? ユビナガオンナじゃん!」