ハートがバキバキ鳴ってるの!

「え、どういう意味?」
「ちょっと待ってろ」
 浅野くんがカバンからスマホを取り出して操作すると、聞き覚えのある規則的な音が鳴り始めた。
 ピッ、カッ、カッ、カッ、ピッ、カッ、カッ、カッ……。
 初日に浅野くんにベースを教えてもらった時にも聞いた音だ。
 これはたしか、「メトロノーム」っていうんだった気がする。

「今から録音するから、最初から弾いてみな。曲の音源じゃなくて、メトロノームに合わせて」
 録音か。
 そういえば、モニ先輩にも前に一度勧められた気がする。
 そのときは聞き流してしまって、結局今まで録音しながら練習したことはない。

「タイミングよければ、録音開始するから言って」
「じゃあ、始めます」
 小さな声で浅野くんに合図して、「君の瞳はマグネット」のベースラインを頭から弾く。
 音源が鳴ってなくてベースの音だけだから少し寂しい。
 譜面は完璧に覚えているから、演奏は問題なくできた。

 ※ ※ ※

「じゃ、今からあんたのベースの音を流すから、よく聴いてみな」
 一曲演奏し終えると、浅野くんがスマホの画面を親指で押した。

 少し緊張しながら、浅野くんの手元に耳を傾ける。
 ……え?
 なに、これ。
 スピーカーから自分の演奏が流れてくるにつれて、だんだん体が重たくなっていくのを感じた。
「これ、あたしのベースの音?」
「録音してみたらよくわかるだろ? 今の自分になにが足りていないのか」

 いつもノリノリで弾いていたはずの旋律。
 常に間近で聴いていたはずの音。
 それなのに、スピーカーから聞こえてくる音声は、あたしの記憶の中で鳴る音とうまく重ならなかった。
 音階が移る時にリズムがずれるし、弾いている弦以外の音を消せていない(この前モニ先輩が言っていた「ミュート」ができていない)し、高い音と低い音で大きさがバラッバラ。
 そんな……。
 あたし、こんなに下手くそだったの!?