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「みなさん、ごめんなさい。あたしのせいで……」
 部室でミーティングが始まってすぐ、震える声を絞り出しながら頭を下げた。

「いやいや、あいつが厳しすぎるんだって! みかるちゃんは複雑な部分もちゃんと弾けてたし、最後のサビの疾走感とか良かったよ!」
「気にすることはありません。初めての人前での演奏、よく頑張りましたね。お疲れ様でした」
 こんな時でも、セラ先輩はあたしの良かったところを褒めてくれるし、テツ先輩はあたしの努力を認めてくれる。
 先輩たちのやさしさが、傷口に塗る薬のようにひりりと身にしみた。

「そうそう! 過ぎたことより、これからどうするかだよ!」
 隣にいるモニ先輩に肩を叩かれて、顔を上げる。
 いつも部室で合わせたあとにフィードバックをくれる時と同じハイテンション。
 そういえば、今までモニ先輩がくれたアドバイス、正直よく理解できていないところも多かった。
 なのに、わかったふりして聞き流しちゃってたんだ。
「まあ、弓野のあれは言い過ぎだけど、まだまだ改善できるところがたくさんあるのは事実だね。それはみかるんだけじゃなくて私たちも同じ。だから、元気出して一緒に頑張ろ!」
「はい、あたし頑張ります」
 そうだ、いつまでも落ち込んでちゃいけない。
 両手で頬をペシペシと叩いて、気持ちを切り替えた。

「というわけで、明日からみかるちゃん特訓期間だね!」
 いつもなら反応に困るセラ先輩のウインクにも、今は心が温まる。
「はい、みなさんよろしくお願いします!」
 あたしを受け入れてくれるみんなのためにも、二週間みっちり頑張るぞ!
「……と、言いたいところなんだけどさ」
 難しい表情をしたモニ先輩の言葉を、テツ先輩が引き継いだ。
「僕たち三年生、明日から修学旅行なんですよね」

 あ、そうだった! 
 ちょっと待って。ということは……。
「ジオ、三日間みかるんの練習任せたよ!」
 えー! 
 浅野くんと二人!?

「弦楽器同士、よろしく頼みますよ、浅野くん」
「オレらがいない間、みかるちゃんのこと任せたぜ!」

 浅野くんは、先輩たちのほうを見ずに低い声で「ういっす」と返事した。

 そんなー!!
 浅野くんと二人きりだなんて、怖すぎる。
 なに話したらいいのかわかんないし。
 いじわるせずにちゃんと教えてくれるのかな?