ハートがバキバキ鳴ってるの!

「君たちの演奏は、ドラムはフィルインで走るうえ、ギターもミュートが甘いが、四人の音はまだ聴くに耐えるものだ。だが、ベースの君——」

 弓野会長の人差し指が、ピストルみたいにあたしに向けられる。
「君が全てを台無しにしている。曲のリズムを生み出し、ハーモニーを根底から支えるベースがもたついているがゆえ、アンサンブル全体が崩壊しているのだ」

 会長の言っている意味がちんぷんかんぷんなまま、目の前が暗くなっていく。
 今日まで二ヶ月少し、自分なりに練習頑張ってきたつもりだった。
 いろんな専門用語を覚えて、筋肉痛に耐えながら毎日ベースを弾いた。
 さっきだって、ちゃんと楽譜通りに弾けたのに。
 どうしてそんなふうに言われなくちゃいけないの?

「てめえ、よくもそこまで……」
 あたしの左隣にいたセラ先輩が、拳を握りしめて一歩踏み出した。
 暴力はダメ!
「セラくん」
 テツ先輩の穏やかながらピシャリとした声が、セラ先輩を制する。

「わりぃ、つい……」
 踏みとどまったセラ先輩は、苦虫をかみつぶしたような顔をしながら、右拳で自分の外腿を叩いた。

 いつもなら、体育の授業や学年レクで楽しく過ごしている体育館。
 さっきまで、ステキなパフォーマンスが次々繰り広げられていた場所。
 その空間が、いつになく険悪なムードに包まれている。
 それは全部、あたしのせい。
 弓野会長の不満の理由は、正直よくわからない。
 だけどとにかく、あたしさえいなくなれば、丸く収まるんだ。

「繰り返す。出演したいのであれば、ベーシストを代えたまえ」
 だったらもう、いっそのこと、
「あの、あたし——」
「お断りします」

 抜けます、とあたしが言うより一瞬早かった。
 列の左端から、冷たい声が体育館を駆け抜けた。

「おれら全員、この人に文化祭ライブでベース弾いてほしいって思ってるんで。信任投票で、この人が当選です」
 視界の端に、先輩たちのうなずきが映る。

 なぜだか、声の主のほうを見られそうにはなかったけれど。
 吹雪のようなその声は、耳元で何度もあたたかく反響した。