ハートがバキバキ鳴ってるの!

 ※ ※ ※

 演劇部と漫才コンビのパフォーマンスを経て、いよいよ次は軽音部の番。
 生徒会や実行委員会の人たちに手伝ってもらって機材を舞台に運び、あたしたちは各々チューニングや音出しを済ませた。

「こんにちは! 軽音部によるバンド演奏です! よろしくお願いします!」
 舞台下の実行委員の人たちに向かって、よく通る声であいさつするモニ先輩。

「準備がよければ、始めてください」
 実行委員の女子生徒が、机の上でなにかを記録しながら言った。
 その隣では、弓野会長が腕を組んで無表情で舞台を見ている。

「みんな、いい?」
 モニ先輩の呼びかけを受けて、あたしたちはお互いにうなずき合った。
 全員、スタンバイオーケーだ。
 
 実行委員や他の出演者の人たち数十人の視線が、あたしたちに注がれる。
 緊張で、足がガクガク震えてきた。
 いつもよりも心なしかベースが重たく感じる。

 だけど、キーボードの一音目が耳に届いた途端、スイッチが入った。
 体育館の舞台の上だって、始まってみればいつも通り。
 今まで部室で何度も合わせてきたのと同じことをすればいい。

 気がつけば緊張はどっか行っちゃって、家で練習している時のように安心して指を動かしていた。
 左斜め前から、セラ先輩のうっとりするような歌声が聞こえる。先輩たちや浅野くんの演奏を包まれながら、あたしも自分のパートを弾く。

 はあ、やっぱバンドって楽しい!
 本番はこんな少人数の観客じゃなくて、三百人以上の人だかりに応援されながら演奏するんだ。ワクワクするなー!
 始まる前の張り詰めた気持ちが嘘のように、飛び跳ねるような気分で最後のサビまで弾ききった。
 
 曲が終わると、実行委員会や他の出演者の人たちから拍手をもらえた。
 ふー、Bメロのところでちょっともたついたけど、だいたい練習通りにできた気がする。

 先輩たちや浅野くんの演奏も普段通りだったし、あたしたち上手くやれたはず!
 ほっとした気持ちで、機材の片付けに取りかかる。

 弓野会長は、腕を組んで机の上の書類に視線を落としていた。
 その表情は、相変わらず読めなかった。