ハートがバキバキ鳴ってるの!

 テツ先輩の言葉を聞いて思い出す。
 入学式の時、在校生代表でスピーチしてた人だ!
 独特な雰囲気を持つおごそかなバリトンボイスが印象に残っている。

「今年は音楽系の部活多いし、あいつも張り切ってそうだなー」
「ええ、そうですね」
 意味深に笑うモニ先輩とテツ先輩に詳しく話を聞いてみたかったけど、荷物が重くてそれどころではなかった。

 ※ ※ ※

 体育館に入ると、モニ先輩が受付を済ませてくれて、あたしたちは舞台裏で準備を始めた。

 指示された場所までシンバルを運ぶうち、体がなんだか熱くなってくる。
 はあ、今からあのしっかりした実行委員の人たちの前で演奏するんだ。
 メンバー以外の人の前で演奏するのは初めてで、うまくできるか不安。

「おっと」
 よそ見していたあたしは、床に落ちていた紙ですべって体勢を崩し、横にいる人に頭をぶつけてしまった。
「ご、ごめんなさい! ……って、あ、なんだ、浅野くん」
 実行委員の先輩にぶつかったのかと思いきや、同じ部活の同級生だとわかって少しほっとしてしまった。
 けれども、直後に浅野くんの細い目に捕らわれてヒヤッする。
「なんだよ。ぶつかった相手がおれなら謝らないくていいのか?」
「そ、そうじゃないって! 申し訳ありませんでしたっ!」
 大げさなくらい深々とお辞儀をしてから、早足で機材置き場へ向かう。

 浅野くん、軽音部の中で唯一の同級生なのに、一番関わりづらい。
 このまま部員が増えないうちに三年生が引退したらさ、この子とあたしの二人で部活を運営していかなきゃいけないの? 
 そんなの絶対ムリ!