ハートがバキバキ鳴ってるの!

 ※ ※ ※

 それから週末を挟んで月曜日。
 ついに、文化祭オーディション当日だ。
 会場である体育館まで、あたしたち五人は手分けして機材を運んだ。

「修学旅行の前日に文化祭オーディション入れるなんてさ、まじで鬼スケジュールだよな」 
 ギターアンプをのせた台車を押しながら、セラ先輩がぼやいた。

「ほんとに! 私まだなーんにも準備してないんだけど!」
 顔を引きつらせてキーボードを運びながら、モニ先輩が相槌を打つ。

 そっか、明日から三年生は修学旅行。
 お土産なに買ってきてくれるかなー。

「お、いたいた」
 体育館の入り口に着くなり、モニ先輩が隣のテツ先輩の肩を叩いた。
「てっちゃん、見て、《《あいつ》》がいる」
 あいつ?
「間違いなく、彼ですね」
 訳知り顔で微笑むテツ先輩。

 体育館の中を覗いてみると、舞台前に何台かの折りたたみ式机が並べられていた。
 横に並んで座った十人前後の男女が、机の上でなにやら作業をしている。たぶん生徒会と文化祭実行委員会の人たちだ。
 パッと見、その中に変わった人はいない。

「あの、あいつって誰ですか?」
 気になって尋ねると、モニ先輩が舞台前を見ながら答えてくれた。
「真ん中にいる男子」
 モニ先輩の視線の先を追って、目を凝らしてみる。
 長い机の中心で、男子生徒がふんぞり返っていた。
 後ろ姿だからよくわからないけど、なんだか見覚えある気がする。

 やがて立ち上がったその男子生徒が、横にいる二、三人に向かってなにか指示するように話し始めた。
 かっちりとワックスで固められたミディアムヘア。迫力のある彫りの深い目、端正な顔立ち。
 やっぱりどこかで見たことある気がするんだけど、誰だっけ……。

「瀬底さんもご存知だと思いますよ。弓野(ゆみの)弦久(つるひさ)くん。今年度の生徒会長です」