ハートがバキバキ鳴ってるの!

 ※ ※ ※

 中間テストの順位が発表されてからちょうど一週間経った火曜日。
 幸いあたしは、塾に入れられることもなく、無事軽音部での活動を続けることができていた。
 
「はーい、みんな! 来週月曜日はなんの日でしょうか? じゃあ、みかるん!」
「えっと、文化祭オーディションです!」
「大正解! さっすがみかるん! ちゃんと覚えてたね!」
「危うく書類を出し忘れるところだったモニとは大違いですね」
 テツ先輩にじとーっと睨まれたモニ先輩は、「えへへ、なんのことかな?」と後頭部をかいた。

「みんな知ってる通り文化祭では三曲演奏するけど、オーディションは『君の瞳はマグネット』でやるから。みかるんも安心してね!」
「はーい!」
 モニ先輩の瞳に照らされて、体に自信がみなぎってきた。
 「君の瞳はマグネット」は三曲のうち一番長く練習している曲だから、モニ先輩の言う通り安心だ。

「それじゃ、三十分後に合わせるね! それまで個人練習頑張ろう!」

 ミーティングが解散したあと、あたしはささっとチューニングを済ませ、イヤホンで曲を聴きながらベースを弾いた。

 すっかり覚えたイントロのフレーズ。
 少しずつ慣れてきたBメロのリズム。
 一番と二番で微妙に違う部分も、最近暗譜できた。

 国語の成績は上がりそうにないあたしだけど、部活のほうはそこそこ順調だ。
 二ヶ月活動してみて思ったんだけど、ベースって、たぶんバンドの中で一番簡単なパートじゃない?

 浅野くん見てると、ギターは何弦も同時に押さえて弾かないといけないから大変そうだし。
 モニ先輩のキーボードも、左手と右手で全然違う音出してて忙しそうだし。
 セラ先輩の歌声はセラ先輩にしか出せないし、声の調子って日によって結構変わるみたい。
 テツ先輩のドラムに至っては、手と足の動きがほんとに意味不明で。

 それに比べてベースは——
 まず、ギターと違って弦一本ずつ弾けばいいのがありがたい。
 それに、低い音であんまり目立たないから、難しいフレーズはこっそり簡単にしちゃっても、あんまりバレてないっぽいんだよね。

 オーディションとはいっても、いつも部室でみんなと合わせてる時と同じだ。
 覚えた譜面をなんとなく弾けば、きっと大丈夫!

 部屋の隅の浅野くんは、納得いかない表情で首を傾げながら、同じフレーズを何度も何度も繰り返し練習していた。