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「さあ、正式に入部を決めてくれたみかるんに、課題曲を与えよう! おいで!」
 五人でのミーティングが終わった直後、モニ先輩に声をかけられて椅子に座る。目の前の机には、A3用紙十枚ほどの束が広げられていた。
 一枚目の左上に、大きな文字で「君の瞳はマグネット」と書かれている。昨日四人が演奏してくれた曲の名前だ。

「七月の文化祭ライブでやる曲。あと二曲はまだ決まってないから、とりあえずこっちから練習してもらうよ」

「はい、わかりました」
 ん、ちょっと待って。今の話だと、
「あの、モニ先輩?」
「なに?」
「あたしも文化祭ライブに出るんでしょうか?」
「あったりまえじゃーん! さっそく活躍してもらうよ!」
 ひえーっ!
 あたしが文化祭で演奏!?

「ちなみに、うちの生徒数って全体で何人くらいでしたっけ?」
「たしか、三百人くらいだったかなー」
「さ、三百人!?」
「いやあ、気持ちいいよー! 観客がずらーっと並んでる中の演奏は!」
「あの、ライブの時の観客はあたしの顔見知り十人くらいにしてもらえませんか?」
「なに言ってるの、みかるん! 私たちの音楽で全校生徒をガツンとねじ伏せなきゃ!」
「モニ先輩、なんだか言葉遣いが怖いです……」

 興奮して目をギラつかせるモニ先輩に、あたしの声は届かない。

「あと三ヶ月一生懸命練習したら大丈夫だから、一緒に頑張ろうね!」
「は、はい、頑張ります」

 人前で演奏できるのはすごく楽しみだけど。
 そうはいっても、いきなり三百人(保護者とかも含めたらもっとだよね)の前でライブだなんて。
 舞台上でベースを弾く自分の姿を想像して、体がぶるぶると震えてきた。