ハートがバキバキ鳴ってるの!

 前に部室で少しだけ練習した時のことを思い出しながら、ピックで弦を弾く。
 指弾きとは全然違う感覚。慣れない動作。
 上から振り下ろす時と、下から振り上げる時でリズムがずれてしまう。

 やっぱり、あたしには無理なのかな……。
 指弾きに戻そうかな。

 諦めかけてピックを弦から離した時、体の内側から、ため息混じりの声が聞こえた。
『ちゃんと練習する前からそれかよ』
 あのとき、うんざりしたような顔でピックを渡してくれた浅野くん。
 指先に走った感触を思い出すと、体中の細胞があっという間に充電された。

 無愛想に見えるけど。話し方も冷たく聞こえるけど。
 なんだかんだあたしのことを気にかけて、背中を押してくれる人。

 よーし。
 ピックを持つ右手に意識を集中させる。
 完璧じゃなくてもいい。 
 できる範囲からでいい。
 一音一音に気持ちを込めて。

 ……いける、いけるぞ!
 あたし、ピック弾きできてる……気がする!

(どうだ!)
 すっかり得意になって浅野くんにアイコンタクトを取ると、そっけなく視線をそらされた。

 なによ! しっかりリクエストに応えてやったのに!
 つい口を尖らせる。
 だけど、その必要はなかったと、ほんの数秒後には気づかされた。

 ポケットからもう一枚のピックを取り出した浅野くんが、あたしの弾いている音階に合わせてギターを奏で始めた。
 緊張も不安も全部ひっくるめて抱きしめてくれる、おおらかな音色。
 無表情に見える浅野くんから届いたありったけの想いを、全身で受け止める。
 共振した心臓が、今までに聴いたことのない音を立てていた。

 さあ、やたら長く感じた間奏も、あと少しでおしまいだ。
 モニ先輩の指がキーボードの端から端まで走り、テツ先輩が力強くシンバルを叩いて、
「みんな、最後までついてこいよーー!!」
 セラ先輩の掛け声を合図に、体育館が歓声に包まれた。