ハートがバキバキ鳴ってるの!

 MCの間に用意されたパソコンをテツ先輩が操作して、あたしたちは打ち込みの音と一緒に曲を進行させた。
 機械が奏でる、正確なギターの音。

 大丈夫だよね。浅野くん、来てくれるよね。 
 アップテンポで元気が出るような曲なのに、今のあたしにはどこか切なく響く。

 やがて、二番のサビに入った。
 この次は、あたしと浅野くんが交互にソロを弾く間奏部分だ。

 けれども、浅野くんの姿はまだ見当たらない。
 間に合わないのかな……?

 曲が進むにつれて、忘れていた罪悪感が胸の中でふつふつと大きくなってきた。
 そもそもこうなっちゃったのは、一回目のオーディションの日まであたしがいい加減に練習していたから。
 再オーディションをすることになったせいで、テスト勉強の時間が取れなくなった浅野くん。その結果、お母さんと約束した順位に入れなくて、文化祭に来られなくなった。

 サビの後半、セラ先輩の突き抜けるような裏声が響き渡る。
 会場は大盛況だ。
 目をハート型にする女の子たち、勢い良く拳を振り上げる男の子たち。感心した様子で見守る先生たち。

 なにもかもがうまくいっているように取り繕われたこの空間に、だんだん耐えられなくなってきた。
 
 あと八小節で間奏部分になっちゃう。
 浅野くんと交代で弾くソロ、楽しみだったのにな。

 もし浅野くんが来なければ、モニ先輩がソロを弾いてくれることにはなっているけど。
 でもやっぱり、最後は浅野くんと一緒に演奏したかったよ。

 間奏部分まで、あと四小節。
 浅野くん、ごめんね、あたしのせいで……。
 
 目頭が熱くなるのを感じて、涙がこぼれないようにぎゅっと目をつぶる。
 真っ暗な世界で、冷え切った指先を必死に動かしていたその時、
「おおっー!」
 客席から歓声が聞こえた。

 ほくほくと温かい予感がこみ上げてきて、目を開ける。
 紺色のギターが、持ち主の肩にかけられていた。

 切れ長の目が一瞬だけあたしを見て、ぷいっと横を向いた。