※ ※ ※
きれいなキーボードの旋律を合図に、一曲目「君の瞳はマグネット」が始まった。
モニ先輩にならって、一音一音丁寧に、伝えたいニュアンスを考えながら弾く。
それと同時に、セラ先輩に言われた通り、多少納得いかなくてもノリノリな表情は崩さない。
この三ヶ月で学んだこと一つひとつを思い出しながら演奏した。
弓野会長はあの短い時間で曲をしっかり自分のものにしていた。ところどころ元のフレーズと違う部分もあったけど、ポイントは押さえて違和感なく仕上げている。
土壇場で助っ人を呼んだとは思えないほどライブは順調に進み、気がついたら二曲目が終わっていた。
——浅野くんが来ないまま。
※ ※ ※
「いぇーーい!! みんな、文化祭楽しんでる?」
最後の曲「閃光夏休み」の前に、MCが入った。
セラ先輩の問いかけに、大きな歓声が上がる。
「それじゃ、今日は時間の関係でメンバー紹介からいくよ!」
客席中を見渡しながら意気揚々と話すセラ先輩。まるでプロの歌手みたいだ。
「まずは、ゲストから! ギター! 弓野会長!」
セラ先輩に呼ばれた会長が、ギターを悠々と弾く。高音を中心とした神聖な雰囲気のフレーズ。なんだかんだ乗ってくれてるみたいだ。
「残念ながら、会長はこのあと仕事に戻るため抜けてしまいます! ここまでありがとうございました!」
きびきびと一礼する会長を、大きな拍手が包んだ。
スタンドにギターを置いて舞台袖へ向かう会長。
謎だったのは、自分に近い上手《かみて》の袖へ抜けるのではなく、あたしがいるほうの下手《しもて》へ向かって歩いてきたことだ。
な、なんでわざわざ……?
弓野会長が近づいてくるにつれて、得体の知れない胸騒ぎが大きくなる。
無表情で堂々と歩くその姿が、やがてあたしの真後ろまで来た。
「早く通り過ぎて」と思いながら身を固めていると、小さく耳打ちされた。
「いいリズムキープだな。おかげで弾きやすかったぞ」
ふいに注ぎ込まれたその言葉に、少しの間脳が動きを止めた。
一歩一歩遠ざかる会長を眺めるうち、じわじわと実感が湧いてきて。
今日一日の疲れが一気に取れるのを感じた。
きれいなキーボードの旋律を合図に、一曲目「君の瞳はマグネット」が始まった。
モニ先輩にならって、一音一音丁寧に、伝えたいニュアンスを考えながら弾く。
それと同時に、セラ先輩に言われた通り、多少納得いかなくてもノリノリな表情は崩さない。
この三ヶ月で学んだこと一つひとつを思い出しながら演奏した。
弓野会長はあの短い時間で曲をしっかり自分のものにしていた。ところどころ元のフレーズと違う部分もあったけど、ポイントは押さえて違和感なく仕上げている。
土壇場で助っ人を呼んだとは思えないほどライブは順調に進み、気がついたら二曲目が終わっていた。
——浅野くんが来ないまま。
※ ※ ※
「いぇーーい!! みんな、文化祭楽しんでる?」
最後の曲「閃光夏休み」の前に、MCが入った。
セラ先輩の問いかけに、大きな歓声が上がる。
「それじゃ、今日は時間の関係でメンバー紹介からいくよ!」
客席中を見渡しながら意気揚々と話すセラ先輩。まるでプロの歌手みたいだ。
「まずは、ゲストから! ギター! 弓野会長!」
セラ先輩に呼ばれた会長が、ギターを悠々と弾く。高音を中心とした神聖な雰囲気のフレーズ。なんだかんだ乗ってくれてるみたいだ。
「残念ながら、会長はこのあと仕事に戻るため抜けてしまいます! ここまでありがとうございました!」
きびきびと一礼する会長を、大きな拍手が包んだ。
スタンドにギターを置いて舞台袖へ向かう会長。
謎だったのは、自分に近い上手《かみて》の袖へ抜けるのではなく、あたしがいるほうの下手《しもて》へ向かって歩いてきたことだ。
な、なんでわざわざ……?
弓野会長が近づいてくるにつれて、得体の知れない胸騒ぎが大きくなる。
無表情で堂々と歩くその姿が、やがてあたしの真後ろまで来た。
「早く通り過ぎて」と思いながら身を固めていると、小さく耳打ちされた。
「いいリズムキープだな。おかげで弾きやすかったぞ」
ふいに注ぎ込まれたその言葉に、少しの間脳が動きを止めた。
一歩一歩遠ざかる会長を眺めるうち、じわじわと実感が湧いてきて。
今日一日の疲れが一気に取れるのを感じた。