ハートがバキバキ鳴ってるの!

 ※ ※ ※

 十七時十分。ライブ開始まであと二十分となった。

 タクマくんのお兄さんが舞ちゃんを通して伝えてくれたところによると、思ったよりも道が混んでいるらしい。
 体育館への到着は、どんなに早くても十七時四十分頃になるそうだ。

「あーあ、一曲目には間に合わないかー!」
 モニ先輩が両手で頭の後ろを押さえて、悔しそうに口を尖らせる。

「開始時間ずらしてもらうことはできないよなー」
 セラ先輩のつぶやきに、テツ先輩が力なくうなずく。
「でしょうね。学校も下校時刻には厳しいので。それに、これ以上僕たちの都合でプログラムを動かすのも気が進みません」

「あの、浅野くんが間に合わない分はどうしましょうか?」
 誰にともなく尋ねると、テツ先輩の冷静な提案が返ってきた。
「予定通り打ち込みですかね。一応必要な機材は持ってきていますし」

 はあ、やっぱり打ち込みか。
 途中までとはいえ、寂しいなあ。

 肌寒い気分になっていくあたしとは反対に、どこか楽しそうな顔をしている先輩が一人。
「それもいいけど」
 人差し指を顎を当ててなにかを考えていた様子のモニ先輩が、やがてセラ先輩を見てニヤッと笑った。

「せっかくだから、お客さんにサプライズしちゃおっか!」

「どういうこと?」
「まあまあ、ちょっと待ってて!」
 首をかしげたセラ先輩を尻目に、モニ先輩はステージを横切って反対側の舞台裏へ駆けていった。

 ※ ※ ※

 それからほどなくして、浅野くんが使っていた紺色のギターが、チューナーを使うことなく精密にチューニングされた。

「いやー、まじ助かる! あんたもやさしいとこあるじゃん!」

 ギターを構えた人物が、ニタニタ笑うモニ先輩をうらめしそうににらみつける。

「まったく。なぜ我輩がこんなことを」