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「うわ、まじか!」
 
 十六時五十八分、ライブまであと三十分少し。
 舞台裏でイヤホンをつけてベースを練習していると、セラ先輩の不穏な声が耳に入った。
「どうしたの?」
「LINE、見て」
 セラ先輩に促されてスマホを取り出したモニ先輩が、目を丸くした。
「人身事故!?」

 えっ?
 つられてあたしもスマホを取り出す。
 ロック画面に現れた通知を見て、体が凍りついた。

【すみません、人身事故で電車が運転見合わせになりました。今のところ、運転再開がいつになるかはわからないそうです】
 アプリのトークグループに投稿された浅野くんのメッセージ。

「うー、そんな」
 漏れ出た声は震えていた。
 こんなの、ひどいよ……。
 せっかく五人で演奏できそうだったのに。
「タクシー乗れるほどのお金は持ってなさそうだしな……」
「どうしたの?」
「電車が止まっちゃってね、浅野くんがライブに間に合わないかも……って、へっ?」

 あまりにも自然に、あたしの独り言に割り込んできたその声。
 凛とした響きに誘われて、顔を上げる。

 まっすぐ降ろされたセミロングヘアが、あたしの息を止めた。