金曜日、午後五時五十五分。
 あと五分で閉館を迎える図書館のカウンターで、私は進藤さんを待っている。何時に来るのかはわからないけれど、必ず行くと言っていた以上、先に帰るわけにはいかない。
 コンピューターの電源を落とす準備をしていると、自動ドアが開く音がした。顔を上げると、進藤さんが入って来るのが見えた。
 
「ひなたさん、遅くなってすみません」

 書棚へ寄ることもなく、進藤さんは一直線に私の座るカウンターまでやって来た。今日は本を借りるわけでも返すわけでも無さそうだ。
「いえ。お疲れ様です」
 ちらりと彼の方に目をやると、私はマウスを動かしてコンピューターをシャットダウンした。館内にはもう誰もいない。スタッフルームには、紗織さんがまだ残っているはずだ。
「すみません、もう上がりますので。少しだけお待ちいただいてもいいですか」
「はい、もちろん。待ってます。俺、外に出てましょうか?」
「いえ、大丈夫です。少しだけ待っていてください」
 
 
 スタッフルームへ戻ると、やはり紗織さんの姿があった。
「紗織さん、お疲れ様です。すみません、お先に失礼させていただきます」
 ロッカーから自分の荷物を取り出し、紗織さんに頭を下げる。
「進藤さん、来てるの?」
「はい……。やっぱり、本人からちゃんと話聞かなきゃと思って。これから、行ってきます」
 紗織さんが心配そうな顔で私を見る。
「そっか……。うん、それがいいと思う。ちゃんと話さないとね」
「はい。あ、それじゃ行ってきます。お疲れ様でした」
「うん、お疲れ様」
 スタッフルームの扉に手をかける。
「ひなたちゃん」
「はい?」
「何があっても、私はひなたちゃんの味方だからね」
 
 その言葉が、ただ嬉しかった。