この場所で始まる恋

 そんな私を心配したのか昼休み。はい。と明日夏の席の上でお弁当を置いて購買から戻ってくる明日夏を待っていると戻ってきた明日夏が私の前にイチゴミルクのパックを置く。

「急にどうしたの?もらうけど(笑)」

 急に差し出されたイチゴミルクのパックに驚きつつも遠慮なくもらいストローを差して飲む。

「なんか最近、元気ないね?」

「そうかな~?」

「香坂先生となんかあった?」

「...」

 やっぱり長年一緒にいる明日夏にはばれてしまうんだなと思いつつ話すか悩んでいると

「言いたくなきゃいいけど、話はいつでも聞くよ?」

 と言われて失恋したことを話す。もう忘れてたはずなのに話していくと辛い思い出が蘇ってきてまた泣きそうになる私に優しく相槌を撃ちながら寄り添うように聞いてくれてよく頑張ったねと慰めてくれる明日夏にこの人の友達で良かったと再認識させられる。誰かに話したことで気持ちに改めて整理がつきなんだが前を向けそうな気持ちになる。

 もうこれで忘れよう。先生に恋していたことにしっかり区切りをつけて学校の行事やらテストやらに追われて気がつけば日がどんどん流れていって辺りは寒さが漂うようになっていた。あと1,2か月で受験の日になることもあり教室内では勉強している人が多くなり、受験期特有のピリつきもあった。

 その日はずっと避けていた思い出の図書室になんとなく勉強しに行こうと思い、図書館に向かう。もう忘れたはずなのにまだ意識して緊張してしまう。気にしててもしょうがないと扉を開けてキョロキョロとあたりを見渡すと勉強している生徒ばかりで先生の姿はない。ほっとする気持ちと少し残念に思っている気持ち振り払い、席について問題集を広げて進める。あれからどれくらいやっただろう?かなり集中していたのか外を見ると外は日が短くなったこともあり暗くなり始めていた。そろそろ帰るかと荷物をまとめていると

「西、原さん?」

 何度も聞いたことある声にドキッとなり手が止まる。ずっと避けていたその声に呼ばれて嫌なはずなのにどこか喜んでいる自分がいる。顔を上げると寂しそうな顔をした先生の顔が映るが、なんでそんな顔をしているのか理解できない。

「先生..こんにちは。」

「なんか久しぶりですね、お話するの。」

「そう、ですね。」

 前はあんなにポンポン話していた会話も気まずさがどことなく漂い、その空気から逃げたくなる。

「私はもう帰るので、それじゃあ。」

「あ、待って!」

 耐え切れず会釈して帰ろうとすると慌てるように静止する先生の言葉に立ち止まると私の目の前まで来て鞄の肩掛けを握りしめていた手を取りその上に何かのせる。何かと思い手元に目線を向けると『合格祈願』と書かれたお守りがのせられていた。驚きで先生の方を見上げると照れくさそうに頭を掻く先生が

「渡そうと思っていたのですが、なかなか会えなくて良ければもらってください。」

 という。でも、と申しわけなそうな顔をしている私にさっきまでとは違い、いつもの優しい表情になると

「もらってください。私のためだと思って。受験、無理のないように頑張ってくださいね。それじゃ。」

 それだけ残し、図書室を差って言った。握っているお守りに目線を戻し思い出したかのように図書室を出るとまだ廊下を歩いている先生の後ろ姿を見つけ呼び止めると足を止め振り返った先生の前に駆け寄る。

「ありがとうございます!受験、頑張ります!」

 勢いで言うと、私の勢いにびっくりした表情をしている先生にそれじゃあ!と頭を下げて走り去る私の手にはまだもらったお守りが握られていてうれしさで頬が緩んでしまう。