この場所で始まる恋

 夏休みも残り二週間。夏休みに入って図書室で合った日から先生には週2回、図書室で勉強を教えてもらっている。そしてその時間はいつしか自分の楽しみになっていてその日が来るのを待ち遠しく思っていた。今日も図書室で先生は業務、私は問題集に取り組んでいた。しかしそんな日々も学校が始めるぎりぎりまで勉強するのは大変だかと最後の週はお休みという先生の優しさから勉強会をするのは今日まで。いつも通り私は問題集、先生は自分の業務に集中をする。時間が経って飽きてきた頃、ふと気になったことを先生にぶつけてみた。

「先生ってモテますよね?」

 すると集中していた手が一瞬止まるがまた動かし始め、そのまま呆れたように返す。

「なんですか急に?そんなことないですよ(笑)普通です。」

 いや、これで普通とか他はどうなんだよ。あんなに人に囲まれてモテないとか無理あるでしょ。と言いたいところだが我慢して会話を続ける。

「いつも人に囲まれてるじゃないですか。」

「それは、みんなが話しかけてくれるからなだけであって、モテるとは違うと思いますが、、?」

「学生の頃は?」

「う~ん、どうですかね、、」

「バレンタインのチョコとか」

「それは、もらったことあるけど、、」

「いくつくらいですか?」

「え~数えてないけど、、まぁまぁ?」

「彼女とかいた時ありますか?」

「高校まではいましたが、もう別れてるます。」

(ホッ。)

  なんでも答えてくれる先生にどんどん質問をぶつけると話の流れで聞いた何気ない質問の返答にほっとしている自分にはてなマークが浮かびつつ話を続ける。

「今はいないんですか?いい人?」

「えぇ、?!そうだね、今はいないですかね。仕事もあるし出会いとかないので。というか、勉強に飽きたからって先生の恋愛事情聴きすぎですよ?」

「!」

 しまった、答えてくれるからと勢いでずかずか人の恋愛事情聴いてしまった、、と申し訳なくなり謝る。

「すみません。プライベートなこと聞きすぎました。」

 正直、気になるけどこれ以上聞くのはさすがに失礼だからともう一度気合を入れ直し置いていたペンを持って勉強を再開しようと意気込む。

「別に謝ることないですよ?」

 参考書にいっていた目線を上げると頬杖をついて先生が映る。

「え?」

「そういうの気になる気持ちなんとなく分かります(笑)恋バナ、青春だなー。」

 少し無邪気な笑顔を浮かべる先生。多分、私が申し訳なく思わないように気を使ってくれているのだと思う。その優しさにまたドキッと胸が高鳴る。持ち直したペンを置き直して会話の続きをする。

「なんか、モテる人ってどんななのかなって思って、、」

「なんですか?それ(笑)別に僕はモテてないですけど。」

(いやモテてるでしょ、、)

「もしかして気になってる人がいる、とか?」

 なんとも意地悪な笑みを浮かべてこちらに聞いてくる。その問いに、ドキッと心臓が鳴り、顔に熱が集まることが分かる。ただのからかいのような質問なのになぜか何も思い浮かばず俯く私に少しからかったつもりだった先生は『うそ?ほんとに、?』となり、焦るように

「ごめんね!無神経なこと聞いちゃって!!」

そう言ってこちらに近づいた瞬間、至近距離で目が合う。先生の目が大きくなったのを見て、顔が赤いのがばれたと思い、その場からいったん立ち去らなくてはと立ち上がる。

「飲み物!買ってきます!!」

 とだけ言い残し、逃げるように図書室を後にした。とりあえず無我夢中で自動販売機のところまで走り、膝に手をついてゼーゼーと息を整える。そして丸まるようにしてその場にしゃがんだ。顔を触るとまだある熱が手に伝わることに薄々感じていたことが確信になる『先生が好き』と。前まで『かっこいいけど関わると面倒なことに巻き込まれそう。』と思っていたのに先生といる時間が増えて優しさと話しやすい明るさにいつの間にか惹かれていることに気づかされる。こんな恋心を自覚した状況でどう戻ればいいんだ、しかも飛び出してきちゃったし、、と考えながら歩くと気がつくと図書館の前に着いていた。まだ心の整理ができず扉に手を伸ばしたり引っ込めたりを何度か繰り返し

(いいや!なんとでもなれ!!)

 やけくそで扉を開けようとする前にひとりでに扉が開き、目線を上げると香坂先生がいた。

「あ、大丈夫ですか?すごい勢いで出ていったきり帰ってこないので心配で。」

 心配そうな顔している先生の姿を見て、そんな長い時間出ていってたんだ、と思い知り心配を掛けないように笑みを浮かべて

「大丈夫です!すみません!心配かけて、飲み物買いにいたらどれにしようか迷っちゃって、、」

 へへへと笑う私に心配そうな顔を続ける先生に切り替えるように「勉強戻りましょう!」と言ってまた席に着く。その後についてくるように先生も席に座り直し、よしやるか!とわざとらしい仕草に

「すみません、無神経なこと言ってしまって。」

「いえ!!私も困らせちゃってごめんなさい!私もびっくりしてあんな逃げるように出ていってしまって勘違いさせました。」

 また申し訳なさそうな顔をして謝罪をする先生に慌てて弁解をし、自分の行動で気を使わせてしまって申し訳ないと感じる。その後この気まずさの漂う空気を切り替えるように問題集の一箇所を指さし

「ここ教えてください、!」

 と勉強モードに戻す。