男は、私の指さしたファミレスをじ、と見つめて言った。
「へたくそなナンパだな」
「ち、違うわよ!」
 言われて気付いた。これじゃ、さっきの男たちと同じじゃん。

「あの、それならお夕飯代出すからよかったら何か食べてよ。そんなんじゃ、すぐ倒れちゃうわ」
 私がバックから財布を出そうとすると、男は首を振った。

「別に、金がないわけじゃない。一人で飯食うのが嫌なだけだ」
「はあ」
 男はしばらく私を見つめてからぼそりと呟いた。

「ラーメン」
「え?」
「今日はラーメン食うつもりだったんだ。付き合えよ」
「う、うん」
 そう言って歩き出した男のあとをついていく。ファミレスの横道を入っていくから少しひやっとしたけれど、すぐに一件のラーメン屋についた。

 店内は明るくて外から中が見えるし、ここなら変なことをされる心配もないだろう。
 私は男についてその店に入った。

  ☆

「らっしぇーっせー!」
 私たちが店にはいると、威勢のいい声がかかった。
「奥、どうぞー!」
 夕食時で、店内はほぼ埋まっていた。私たちはカウンターの一番奥に座る。