推しがいるのはナイショです!

「そうか。水無瀬さん、これからもいろんなつきあいになりそうだけれど、よろしく頼むよ」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
 私は立ち上がって頭を下げた。

「俺にはよろしくはないのかよ」
 久遠がふてくされた顔で言った。
「真面目に仕事する久遠が想像できなくて」
「俺の有能さに驚くなよ」
「驚かせてみなさいよ」
「仲、いいんだね」
 私たちの様子を課長はにこにこと見ている。

「そ、そんなことないです!」
 私はあわてて否定する。
 ん? けど、私たち付き合ってるんだから、ここは彼氏のお兄さんに向かってよろしくと言うところ? でも、ここは会社だし公私混同はよくないわね。でも、でも?

「そうか。そんなことないんだね」
 課長は、さらににこにこして言った。
「久遠が嫌になったら、いつでも相談してくれ」
「はあ」
「むしろ、その日がくるのを楽しみにしているよ」
「兄貴」
 久遠はふてくされたままだ。

 とにかく。春から久遠と一緒に、尊敬する課長と働けるんだ! それは純粋に嬉しい。
 少しばかりの不安には目をつぶって、私はもう一度、よろしくお願いしますと二人に頭をさげた。
 
 

Fin