「私も帰ります」
「はあ? ふざけんなよ。あんたのせいだぞ。責任とれよ」 
 私の前に男の一人が立つ。距離をとろうとしたら、もう一人の男が私の背後に立った。

「……どいてください」
「ちょっと付き合ってくれりゃいいんだよ。おごってやるからさ」
「好きなだけ、飲ませてやるぜ。たっぷりとな」
 そう言って、二人でにやにやと私を見下ろしてくる。

 さっきと同様、周りは誰も足を止めない。めんどうなことには誰だって関わりたくはない。
 誰も、助けてはくれない。
 私は、バッグをにぎりしめる。

「どいてください」
「そう言うなって。さ、行こうぜ」
「どいてって……!」
「俺のに、なんか用?」
 その時、いきなり別の声がして振り向くと、薄いサングラスにマスクで顔のわからない男が立っていた。背が高い。