推しがいるのはナイショです!

「そう言えば、さっき何か言いかけなかった?」
「あー」
 私が食べ終わったのを見て、答えながら男は立ち上がった。

「それな。……おっちゃん、ここに置くよ!」
「あいよ!」
「え、待っ」
 私が伝票を取る間もなく、男はラーメン代を置くとさっさと店を出る。私はあわてて眼鏡をかけると、男を追いかけた。 

「ねえ、私がおごるって言ったじゃない」
 助けてもらった上におごってもらうなんて、そんなつもりじゃなかったのに。 
「それ、今度」
「今度? 今度なんて……」
「さっき言いかけたのはさ」
 男が振り向く。

「俺さ、ラグバのデビューMV持ってんだ」
「えっ?!」