推しがいるのはナイショです!

 だって、ラグバ好きって公言してないから、なかなかこんな話できないんだもん。普段話すことができない分、つい力が入っちゃった。ああ、もっと推しについて語りたい。

「ホントにラグバ、好きなんだな」
 さっき私も思ったのと同じことを静かに言われて、ちら、と横目でうかがうと、男は、笑んでこっちを見ていた。
 馬鹿にしたような笑みじゃない。柔らかい、微笑み。

「あのさ」
 男が何か言いかけたところで、私のスマホが鳴った。いけない、マナーにしてなかった。
「ごめん」
 一言断ってスマホを出す。
「なに、彼氏?」
「いないわよ、そんなもん。実家の母だわ」
 今日荷物を送ったから、という簡単な内容だった。いつもありがとう、お母さん。

「ちょっと、貸して」
 返信し終わった私のスマホを、男がさりげなく手にした。
「あ、ちょ」
「のびるよ、ラーメン」
「あ」
 のびたラーメンはいけない。せっかく美味しく作ってくれたおっちゃんに失礼だ。でも、私のスマホも大切。

「返してよ」
 すぐに奪い返すけど、その短い間にその男はなにか操作したらしい。