推しがいるのはナイショです!

 伸びのある澄んだ声。ノンブレスで三小節歌いきる技量にびっくりして、むさぼるようにそれまでの映像を見まくった。
 5人いるメンバーがみんな歌がうまい、ダンスがうまい、トークも面白い。
 あっという間に夢中になった。
 推しのタカヤは、おだやかにみんなを見守るお兄ちゃんタイプ。ちょっと、課長に似てるんだよね。

 この歳になってアイドルにはまるなんて、なんとなく恥ずかしくて周りには言えないから内緒にしている。

「俺は特定の推しはいないかな。5人そろった時の、ハーモニーが好き。きれいじゃん」
「……どの歌が好き?」
 私は、ちょっとかまをかけるつもりで聞いてみた。ナンパ目的でラグバの名前を出したなら、有名な歌くらいしか出てこないだろう。

「そうだなあ。どれも好きだけど……『黎明の色』とか、『ready?』とか」
 予想外の答えに、私は眉間にしわを寄せる。
「なんで『ready?』知ってるの?」

 それは、ファンクラブだけが聞ける会員のための特別な曲だ。コンサートでも歌ったことはないし一般には絶対に流れない曲。