「しししってるの?」
 うっかり大きな声を出してしまって、私はあわてて口もとを抑える。

「そりゃあ。有名じゃん?」
「あ、うん。まあ」
「会員番号からして、にわか?」
 私は、むっとして横を向いた。
「好きになったのは最近だけど! でも、そんな風に言われたくない!」
「悪い」
 男は、拍子抜けするくらいあっさりと謝った。

「俺も好きなんだ、ラグバ」
「え?」
「男性ファンも結構多いんだぜ? ラグバって」
「もしかして、あなたも会員なの?」
 あ、だからラグバの会員証だってすぐわかったのかな。

「いや? 歌は聞くけどね」
「そうなんだ」
「はい、お待ち!」
 そこで、頼んだラーメンが出てきた。

 ラグバの話は続けたかったけど、とりあえず私は眼鏡をはずして割り箸を手にする。
 どうせ伊達だし、ラーメン食べるとくもっちゃうんだよね。