キーンコーンカーンコーン……。



授業が終わった。
私はダッシュで図書室に向かった。
この不思議な夢で起こった出来事を、さいとうさんに話したい。
『変な子』って思われるかもしれない。
けれど、さいとうさんに話さなければならない気がする。



「さいとうさん!」



勢いよく図書室のドアを開いた。
かなり急いだはずなのに、さいとうさんはもう図書室にいた。



「はい。こんにちは、りなさん。」



いつもの笑顔だ。
優しい笑顔。



「……本、返却しにきました。」



「はい、じゃあこちらへ。」



カウンターで貸出カードに返却日を記入して、『灰かぶり』は回収された。



「どうだった?」



さいとうさんが、感想を聞いてきた。



「……信じてもらえるかどうかわからないけど、1ヶ月くらいこの本の中に入って暮らしていました。アシェンプテルや継母たちなどではなく、近所のパン屋の娘として働いていました。」



「うん、それで?」



ふんふん、と私の話を聞いてくれるさいとうさん。信じてくれたのかな?こんな嘘みたいな話……。



「…………というわけで、アシェンプテルはお城に行って幸せになりました。ただ旦那様のお屋敷は恐らくもう廃れていくのではないかと思います……。」



すべてを話し終わった後、さいとうさんは言った。



「この本で素敵な体験が出来たのね、おすすめして良かった!」



自分のことのように喜んでくれた。
嬉しい、信じてくれた。
やっぱりこの体験をさいとうさんに話してよかった!
ペコリと頭を下げて、私は図書室から出ていった。流石に1ヶ月みっちりと働いていたような感覚があり、今日は休みたい……。







「さて、と。」



さいとうさんは、『灰かぶり』の貸出カードを取り出した。そして右手をかざし、カードに向かって力を放った。



すると光り輝く卵が現れた。
鶏の卵ほどの大きさだが、とても存在感のあるキラキラした卵。



『素敵な卵が産まれたわ……。ありがとう、りなさん。』



もっともっと、たくさんの卵を集めて孵さなければ……。



わたしの使命はまだ始まったばかり。
一族のために。
そして、自分の為に。