久々に行く学校。
いや、ほんとは昨日も行ってたんだが…。
懐かしくて涙が出そうだ。



「おはよう、レオ。」



りなだ。
俺は涙目でりなを見つめた。
手に持っていた『ラプンツェル』の本に気づいたりな。
内容を知っていたらしく、長かったねお疲れ様。と言って俺を抱きしめてくれた。



放課後。
俺達は図書室へ行った。
さいとうさんに会うために。
いつもの優しい微笑みで、さいとうさんは俺達を迎えてくれた。



「こんにちは。」



「こんにちは、さいとうさん……。この本、返却しにきました。」



そう言って俺は『ラプンツェル』をカウンターに置いた。
本を一瞬ちらりとみて、さいとうさんは俺の方を向いた。



「どうでしたか?あなたにとって素敵な本でしたか?」



「俺にとって素敵かどうかはわからないけど、この本は本とは思えないほどのすごいものでした。」



「……それで?聞きたいわ詳しく。」



「りなの……森本さんの時と同じなんですけど、昨日の夜俺はこの本の中に入ってしまいました。そして10年近く本の中で王子を護る騎士として生きてきました。」



「うん、それで?」



「王子は護りきれず、皆に非難されながら何年も何年もふたりを探し回りました。結局王子は自分の力でラプンツェルと双子を連れて帰ってきました。」



本当に辛かった。
誰も助けてくれない孤独な国で。
それでも生きてこれたのはあの国で出来た友のおかげだ。



「皆が俺を支えてくれた。いい人たちでした。勿論、全て夢だったのかもしれませんけど……。」

 

「良かった!素敵な経験ができたのね。選んだ甲斐があったわ。」



そう言いながらさいとうさんは貸出カードに返却日を記入した。
俺達は礼をして図書室をあとにした。









「さてと。」



さいとうさんは貸出カードに右手をかざし、力を放った。
すると、りなの時より大きな光り輝く卵が現れた。



『10年近くの思いの詰まった、卵ね。』



大事な大事な卵。
私達の未来がかかっている卵。



『ありがとう、怜央さん。』



やはりこの年代の子供たちは素敵な卵を育てる心を持っている。
まだ……大丈夫。






大事そうに卵を抱えながら、さいとうさんはカウンターの後ろにおいてある赤いハードカバーの本の中に消えていった。